登山と安全 (八ヶ岳を例に) |
項目 |
単独 |
個人・同好会 |
山岳会 |
ガイド |
ビレイ (確保) |
実質不能 行って帰って、また行く手順もあるが体力と時間が必要 |
ビレイできる人ばかりではない |
可能 (これができなければ会ではない) |
可能 |
力量判定 |
未知の山に対して無理、行ってみるしかない |
必ずしも正しくはない |
経験豊富 | 経験豊富 |
体制 |
家族 |
家族・知人 |
システムあり |
システムあり |
保険 |
(加入しましょう) |
(加入しましょう) |
冬山や登攀を行う場合は、保険加入を義務付ける会が普通 |
保険付きが普通 |
事故対策資金 |
個人負担 |
個人負担 |
積立金あり、が普通 |
契約の範囲外は個人で |
ところが、積雪期の八ヶ岳で話をしてみると、 会の人よりも個人・同好会の人口が多い様に見受けます。 ここが重要な点です。山岳会に入ると会費や会合などが生じるので、 年に何回も行かない(行けない)人は入会をためらってしまうという事だと思います(私自身も、会が潰れたり移籍したりで常に入会していない)。
【目標】 遊びで事故を起こすな
(1)単独では、自信のある所に限る(割り切る)。
冒険はせず、エスケープルート・引き返しを優先。
(2)単独で困難なルートでは、最低でもビレイ仲間を持つか、会に入る、ガイドと行く。
ビレーしないなら、団体も単独と変わらない(事故を連絡できる程度)。
(3)中途半端が一番危ない! (人口として一番多いのでは? 以下を読んで納得しよう)。
話だけでは十分納得できないものです。
私も何度か行ってみて納得したくらいです。八ヶ岳の一般ルートが、雪によって変化する様子を見て、
ビレイもせずに「行けた」という話や自分の記憶があてにならないことを納得してみましょう。 右の図は、一般道と、主な難所です。 ここでは例として (1)文三郎道から赤岳 (2)横岳鎖場南の斜面トラバース (3)横岳西側の鎖場 (4)奥の院北の鎖場 の順(反時計回り)について掲載します。 ※すべて天気の良い場合です。 他の一般コースにも雪崩や難所はあります。 |
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(1)文三郎道から赤岳 厳冬期に流されるくらいの雪になる場合もありますが、概して冬でも良いルートです。 正月や5月には雪が少なく夏道と大差ない楽なルートとなる場合もあります。 ところが、写真は5月のもので、一見鎖のポールが出ていて楽そうです。しかし雪が溶けて凍ったサンクラストで、鎖もほ ぼ埋まっている場合です。 透明な青氷は、ピックが簡単に打ち込めず、平たく割れて弾かれる。1cm単位でしか深くならない。 アイゼンも同様。 これくらいならダガーポジションで、何度もアイゼンやピックを同じところに打ち込んで進めます。2人なら、支点が多く ビレイしやす いで しょう。 しかし、この状況を見て、ピッケルの石突き(シュピッツェ)のままで歩くと転倒・滑落の危険が大きい事に気づかねばならない。 ラッ キー(または無謀)に行けた話や記憶を信じて進む と、 要求される力量の変化に対応できない場合が起こるという事です。 |
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(2)横岳南鎖場の南にある斜面 正月の例です。 この写真は、まだまだ手前ですが、既に深雪がサラサラ流れやすく、先のほうはヤバイ(ピッケルのシャフトも効かず体ごと流 されそう)と感じていました。 前方の尾根の右側を登ってから左の鎖場へ行く。もちろん鎖は見えない。 |
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ラッセルの深さは、先
行者の跡を利用しても腰くらい あ り、 この先は我々の力量ではムリと判断して引き返しています。
スノーバーなどのアンカーがあっても、強い負荷には流されそうな雪質でした。 ここで追い返されて、事故は減るのでしょう。 ところが、雪が少なく、白い割には夏と難易度が変わらない年もあるのです。 「白」は雪だけでなく、エビのしっぽなどの着氷もあり、遠目ではわかりにくいのです。 |
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(3)横岳西側の鎖場 これは5月の例です。 岩が黒く、楽しい春山と思っていたら、残っている雪は別でした。 日陰でサラサラ流れやすく、表面は西日で溶けて凍った厚いサンクラスト。 一部、クラストの下の雪が流れて空洞となり、ピッケルが全く支点として機能しない部分もありました。 これはビレイ必要でしょう! コケたら滑り台です。氷が崩壊したら巻き込まれます。 しかし上記のことは、写真だけではわからないし、遠目でもさっぱりわからない。すぐ近くまで行って見てわかるのです。 |
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ところが、 右は別の年に横岳から同じところを振り返って撮影したものです(正月の例)。
列をなした黒いのが登山者。 この年は、白い割には積雪量が少なく、鎖が出ていたのでビレイも不要でした。技術的には、夏と大差なかったです。 白い色は着氷もあり、遠目では登山道の様子はわからないのです。 |
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(4)奥の院北の鎖場 この例では、5月でもハシゴが8割埋まっており、右下トラバース道の鎖は出ていませんでした。 先輩によると、厳冬期には、この辺りが雪のナイフリッジになるそうです(撮影地点が既にリッジ状で、通行人も怖かったと言っており、撮影地点の 事です)。 通過方法には2通り考えられます。 1.ビレイして、雪面をトラバース。斜面は本気で切れ落ちていますので、確実な支点が必要。 2.岩の上を行く。風があると危険。ビレイ点少ない。転落危険。アイゼン脱着実質不能:付けたまま。 この写真の場合、風が弱かったので実態は岩の上をアイゼンのまま渡るのが多かった。雪に踏み後はほとんどありませんでした。そうい えば別の先輩は夏でもわざわざ岩の上を行っていた。 ところが、雪が少ない年は、写真右の鎖が現れて利用でき、足元もしっかりしており、夏と技術的に何ら変わらない事もある のです。 |
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(5)地蔵尾根も、 厳冬期は巨大な雪庇が発生し、尾根の上ではなく、
雪庇の急な側面をトラバースする事になる年も(沢側への滑落リスクがある)。無雪期と全く地形が変わる。 (6)中岳沢は4月ごろに雪が落ちる事が多いそうで有名らしいです。 5月でも残っていて、いつ落ちるか判らない場合もあり、厳冬期は基本的に雪崩れる。 (7)硫黄岳から赤岳鉱泉への下りは、ちょっとした雪庇や、ガス時のルートファインディングが、場合によってはあなどれない。 (8)赤岳鉱泉と行者小屋の間に谷が通っています。ここは雪崩の通り道だそうで、目視できない遠くの雪崩が通過して事故が起こります。密集せず通 行したいです(巻き込まれなかった人が助けられるよう)。 |
以上をまとめると、
(1)ルートの状況は非常に大きく変化する。→ 小屋の人や通行者に最新の様子を確認する。ビレイ仲間を持つ。