1.GPSの性質
GPS(Global Positioning
System:全地球測位システム)は米国政府が管理する衛星を使った測位システムで、三角測量の原理によって4個以上の衛星から送られる電波から受信点
の位置を求めるものです。
衛星の発する信号には、信号を送った時刻と衛星の軌道情報が含まれています。電波の速度、および受信時刻と送信時刻の差から衛星までの
距離を求めることができます。正確な時計があれば原理的には3個の衛星から受信点の位置を計算する事ができますが、4個目の衛星を使っ
て、連立方程式によって受信時刻と受信位置を計算しているようです。受信できる衛星の数が多いほど精度は向上します。
従って受信アンテナの指向性が広い範囲をカバーしていたとしても、崖や谷によって電波が遮蔽されたり反射された場合には大きな測定誤差
が発生します。実際に試したところ、受信機の感度にも依りますが下記の結果が得られました。
雨、雪 | 電波が多少の減衰を受けるそうですが、空を遮るものが無ければ問題なし。 なお防水・防滴仕様には注意が必要です。 |
樹林帯 | シラビソや杉など高い木が密集している場合は減衰が大きく、使えない場合多し。 明るい広葉樹や低木の場合は問題なし。 |
沢、狭い谷 | 多くの場合、衛星受信数不足や測定誤差が大きく信頼できない。 壁の場合も同様。 |
多くのGPS受信機に表示される標高は、地球を回転楕円体として近似した場合の海面からの距離です。実際の海面は海流等の影響でこの
近似から外れていますので、ちゃんと校正しておく必要があります。また、受信できる衛星の数が不足した場合、標高は前回の測定結果と同じ
と仮定して2次元測量を行う場合があり、この場合の標高は使えません。
緯度、経度の基準点は国によって誤差を含んでおり、目標と現在位置との相対位置(角度や距離)は正確ですが、緯度、経度を絶対値で入出
力する場合は問題になります。座標系によっては500m程度の差があります。
2.GPSの意義
天気が良かったり、道の上を歩いている限り、道標や山岳同定などによって、まず迷う事はないと思います。また、バリエーション要素が多
く視界が利かない場合でも、沢や尾根など線状のルートにいる事がわかっていれば高度計で位置を特定できます。GPSは専らスキーや広い雪
原でガスに巻かれた場合等に有効と考えます。もっともこういった場合には行動しないのが原則なんですが、GPSがあれば総合的な判断のた
めの情報の一つとして提供できるのです。
機械は故障したり電池切れになる場合もありますから、GPSに頼った山行は禁止的です。
3.GPSと地図
緯度、経度の升目が引いてある地図を買いなおすのも大変ですし、道の無い所を行くので等高線がはっきり読める必要もある。そこで私は国
土地理院の数値地図を元に、杉本さんの作った地図表示ソフト「KASHMIR
3D」から得られる画像を処理して必要な山域の地図を作り出しています。
数値地図は50m間隔の標高データですので、実際の地図の等高線が完全に復元されるとは限りませんし、崖などは表現できませんが、ス
キー用には十分使えそうです。実際には他の地図と併用します。